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自分でいじるわけ

(初版日:2004年04月08日)

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いじる、ってのはぼくの場合、改造とかチューンアップとかではなく、ひたすら直すことに尽きます。メンテする、とか、修理する、という言い方もありますが、感覚的には「いじる」って表現がいちばん近いです。

自分でやるよりプロに頼むべきだ、そのほうが安全で周囲に迷惑もかけない。…そんなことをどこかで言った人がいたような気がしますが、ぼくはそれには反対です。

まず。優れたプロもいますが、そうでない人もいます。プロだからといって、全面的に信用しません。じっさい、過去に三菱のディーラーでひどい修理をされた経験があるのです。締め忘れたボルトがボンネットにはさまり、水温センサーが仮締めでLLCがボタボタ漏れ、インマニの古いガスケットはがしが不十分でそこからエアを吸い込みエンジンが正常に回っていない状態で、修理完了だと引き渡されたことがありました。ディーラーから出る前にぼくがエンジンルームを点検してなかったら、えらいことになってたはずです。東埼玉三菱コルト自動車販売株式会社での、1992年夏の出来事です。それ以来、基本的にすべて自分でいじるようにしています。

スタリオンは出回っている数が少ないうえ、一部に特殊なメカニズムがありますから、トラブルの内容によっては町の整備工場では手に負えないケースもあります。ディーラーにおいても、一般的に経験年数の浅いメカニックが多い、整備解説書が揃っていないなどの理由から、満足できる結果が得られるとは限りません。おまけに、よく壊れるし、よくサビる。どこでどんなトラブルに見舞われるか、わかりません。結局、自分で直すしかないですし、自分で直せなければ、乗れたものではありません。だから、たった一台のマイカーのために、整備解説書を揃え、工具を揃え、トラブルシュートと修理方法を独学で見につけ、走りながらメーターに気を配り、耳をすませ、経験を蓄積していく中で自分のスタリオンをキープしていく術を見につけていくのです。ぼくはプロのメカニックのような汎用のノウハウはありませんが、自分がいじってきたスタリオンについては、誰よりも詳しいといえる自信があります。

自分が乗るクルマを自分でいじる。いいかげんな修理をすれば、即、自分自身にはねかえってくる。最悪の場合には自分が死ぬかもしれない。そう思えば、ブレーキまわりなんて特に気が抜けません。自分がいじったクルマを自分で乗る。あそこのボルトは締め付けトルクが充分だったか。ひょっとして何かやり忘れてないか。そう自分自身に問いかければ、自然とブレーキの踏み方はソフトになりますし、乱暴にアクセルを踏むなんてことにもなりません。自然に、定期点検どころか毎日エンジンルームやら下回りやらをのぞきこむことになります。これが、ディーラーにまかせっきりだったらどうなるでしょう。「プロにやってもらったから、大丈夫」…プロだって人間です。ミスもします。いじったのが自分自身だったら、「ひょっとしたらあそこが」と思うかもしれませんが、人のやったことはわかりません。

ぼくは『禅とオートバイ修理技術』でいうところの、ロマンティックな人間ではありません。プロだからスゴい、という、ブランド信仰にも似たシンプルな考え方はしません。最初はプロを信じていましたが、次々と裏切られた結果、プロだからといって単純に信じなくなりました。もちろん、全部の修理を自分だけで出来るわけではありません。フロントガラスのヒビ修理にはガラス屋、エアコンの修理には電装屋と、必要に応じて専門の業者に依頼します。まかせっきりにはしません。必ず受け取りのときにチェックをします。結局、ブラックボックス、中がどうなってるかわかんないものに安心して身を任せてはいられない、というのが、ぼくの基本的な考え方です。

それを徹底的にぼくに叩き込んでくれたのが、ぼくのスタリオンです。全人格的に対峙してきた相手です。そうおいそれと、見切ってしまうわけにはいきません。あと10年は乗っていたいと思って、相変わらず再生作業にはげんでいます。

それにしても…。レストアがこんなに大変だとは(使いたくなかったこの言葉を、もう使います。だってそうなんだもん)。手間も時間も、それに費用もかかる。これは…一台直すのがやっとだな。